チヌ


 私が一番最初、父に磯釣りを教わったのはチヌ釣りでした。五三竹の竹を3本に切り、真鍮のパイプで繋いだ竿を私の為に新調してくれた時は嬉しくて、毎日眺めていたのを覚えています。当時1000円くらいしたと思うのですが、高価だったのでしょう。40年くらい前の中学1年の時でした。リ−ルは木ゴマでした。父の郷里が北の脇にあったので、休みの度に高崎、わらべ石など、中林の磯に通いました。当時、これらの磯は地伝いに行く事が出来て、チヌも良く釣れました。

 「手も竿の一部、必ず竿は右手で持ち、リ−ルは左手で巻くんだ」とこの時教わりました。これが「阿波釣法」の基本だったのです。スピニングリ−ルが普及したとき、新品のリ−ルのハンドルは右についています。これを店のおじさんに頼んで左に変えてもらうのに、「僕は阿波釣法を知ってるんだぞ」と多分思っていたのでしょうね。遠い昔が思い出されます。

 チヌは徳島県全域にいますが、数を釣るなら阿南市の福村、中林でしょう。全国的に有名です。特に春の乗っ込みの時期など、大釣りが出来ます。大型を狙うなら県南の地磯(牟岐の内妻海岸〜宍喰)が穴場になります。海が荒れて磯が濁ると1ヒロの深さがあれば、チヌが釣れます。大体が50cmオ−バ−と型が良く、自己記録への挑戦が出来ます。海岸での「渚釣り」も荒れた日などチヌ釣りの穴場となります。チヌは濁りに集まるのです。

 那賀川などの河口で、夏に腰まで立ち込み、足で砂をかき足下を濁らすとチヌやキビレが集まってきます。中学生の頃、夏休みは毎日のようにこの釣りをしました。30cm前後の結構大きなのも釣れように思います。撒き餌はいらず、エサは近くで掘ったゴカイで十分でした。今、この釣りをしている人を見かけません。時代が変わったのだとつくづく感じます。

 一番身近な磯釣り、波止釣りの対象漁として人気のあるチヌ釣りは、全国区の魚で、地方地方によって様々な釣り方があるようです。子供からお年寄りまで、みんなが釣って喜ぶ魚の一つでしょう。日本記録は69cmだそうですね、私の記録は57.2cm。釣ったのではなく、釣れたのでした。(写真は徳島新聞社発行の「徳島の海釣り」より)
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